今こそ読みたい、ボードリヤール『湾岸戦争は起こらなかった』(1991)の要約と考察

ジャン・ボードリヤール『湾岸戦争は起こらなかった』、塚原史訳、紀伊國屋書店、1991年 【要約】 ○湾岸戦争にかんするタイム・テーブル 『湾岸戦争は起こらなかった』は湾岸戦争の始まる前、最中、後に書かれた三つの論文を合わせたものである。 1990年8月1…

『天皇の肖像』における錦絵から御真影への変遷と描写の関係

ベンヤミンが『複製技術時代の芸術作品』で告発したようにモデルとコピーの関係には、技術のもつ政治的な力が貫いている。確かに彼の言う通り映画『オリンピア』(一九三八)にみる巨大で政治的な儀礼空間は、映画という技術とリーフェンシュタールの技巧に…

ジオラマのジレンマ

ここにくれば誰でも奇妙な街を一望することができる。1メートル20センチの正方形の木枠に囲まれたこの街は明らかなジレンマを抱えているが、そのジレンマなしには存在できない。 赤い郵便ポストがある。少し古びたポストは、その街になくてはならない訳では…

レヴューの楽しみ方 「走馬灯」と「檸檬」

現代はあらゆるものが許されているように思われる。あらゆる人間が発言権を持ち、「みんな違ってみんないい」という掛け声のもと、「相対的=善」という価値観を植え付けられ、自由を余儀なくされる。私たちは虐げられていないゆえに反動的な衝動を無化され…